Sonia's sanctuary

 「‥‥あの日、世界はゆっくりと静かな変化を始めました。それは、長い年月をかけて繰り返されてきた自我の崩壊と再生というリズムが、再び息を吹き返すような出来事だったのです。」

 この言葉は、いまあらためて「冥王星リターン」の意味を描くのに完璧な解釈といえるかもしれません。

以下はアメリカという大国がいまどのような流れになっているのか、占星術を中心にリサーチしてまとめたものです。

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 冥王星は、太陽系の中で最も遠く、最も遅く動く天体で、約248年をかけて黄道帯を一周します。そのため、長い歴史をもつ国家にとって、冥王星が建国当時の位置に戻ってくる「冥王星リターン」は、時代の終わりと新しい価値観の芽生えを告げる大きな転換点となります。これは、社会や国家の土台に目には見えないヒビが入り、そこから未来の光が差し込んでくるような深い変化を象徴します。

 アメリカ合衆国は1776年の独立宣言を建国の起点とし、そのとき冥王星は山羊座27度にありました。そして2022年から2025年にかけて、冥王星が再びこの度数へ戻ってきており、アメリカ史上初の冥王星リターンを迎えているのです。

 冥王星リターンは通常、古い構造の解体と新たな再構築を促し、大きな進化と覚醒の力をもたらします。占星術師レイ・グラスは、「冥王星リターンは国家の崩壊を意味するわけではないが、常に極めて深い変容をもたらす」と述べています。過去の歴史を見ても、ローマ帝国は2度目の冥王星リターンの後に滅び、イングランドは2度目のリターン期に黄金時代を迎えています。

 アメリカの建国チャートでは、冥王星は第2ハウス、つまり経済、価値観、資源の分野に位置しており、この冥王星リターンは、経済体制や国の価値観そのものの再構築を意味するといわれています。山羊座27度のサビアンシンボルは「巡礼者たちが険しい山を登る」。これは、困難を乗り越えながら高次の目標に向かう精神的な旅を象徴しており、アメリカが直面している試練と再定義のプロセスを暗示していると解釈できます。

さらに冥王星は2023年から水瓶座に入り、2024年11月からは本格的に水瓶座の時代が始まり、2044年まで滞在します。水瓶座における冥王星は、テクノロジーの飛躍的な進化や分散型のネットワーク社会の台頭、そして個人とコミュニティが新たな形でつながる社会変革を象徴しています。この流れは、特に英語圏の一部では「アクエリアン・テクノポカリプス」とも呼ばれ、革新と混乱が交錯する新時代の到来として語られています。

この水瓶座の冥王星は、特定の国家や中央集権的な支配ではなく、個人の創造性や集合知によって社会が動くような、革新的で水平的な世界秩序への移行を促しています。「Collapse Astrology」では、これを欧米中心の支配体制がゆるやかにその力を手放しつつあり、より多極的で多様性に開かれた新たな国際的バランスへと移行していく兆候と解釈しています。

金融分野では、冥王星が山羊座に移動した2009年1月3日と同日に、ビットコインの最初のジェネシスブロックが採掘されたという事実があります。これは、中央銀行を介さない分散型経済システムの象徴的な幕開けとして、多くの占星術師たちが強く注目している出来事です。この出来事は、冥王星の変革エネルギーが経済構造に直接影響を与える力を示すものとされており、アストロスタイルの占星術家たちは、冥王星水瓶座時代が「国家による通貨の支配から解放され、個人の経済的主権が回復される時代」になると解釈しています。

さらに、2022年にはアメリカ建国図の海王星(乙女座22度)と、当時のトランジットの海王星(魚座22度)が正確なオポジション(180度)を形成しました。これは約83年ぶりに起こる重要な天体配置で、前回は1939年、第二次世界大戦の開戦時と重なっています。海王星のオポジションは、国家的な幻想や集団的錯覚からの目覚めを促すものであり、信頼、倫理、理想の問い直しや、メディア、宗教、外交関係の再評価を意味します。アメリカにとっては、内政と国際的な立ち位置の大きな転換点にあたり、冥王星リターンと重なったことで、国の意識構造全体に深い変容と浄化の波が広がっているといえるでしょう。

2024年11月5日には冥王星と火星が接近し、大統領選と同時に社会の根幹に衝撃を与える可能性があります。また、木星と土星のスクエアも制度の再構築と予期せぬ社会的波紋を広げる要因となりそうです。

そして、2025年5月4日から10月13日までのあいだ、冥王星は水瓶座の領域で逆行します。

この期間は、社会全体のシステムやコミュニティの在り方、さらにはインターネットやテクノロジー基盤の根本的な再評価が促される、重要な見直しのフェーズといえます。冥王星の逆行によって、私たちはこれまで信じてきた社会の枠組みや構造の奥に潜む限界や歪みに光を当てることになります。とくに水瓶座が象徴するのは、未来志向、革新、自由な知性、そして水平的なつながりです。これに冥王星のエネルギーが加わることで、外側の変革だけでなく、私たちの集合的な意識の深部にまで変容の波が及ぶ可能性があります。

また、個人レベルでは、これまで無意識の中に押し込めていた感情やトラウマ、制限的な信念が浮かび上がりやすくなります。そうした影の部分と対峙することで、古い価値観を手放し、より自由で本質的な自己へと再構築するチャンスが訪れるのです。自己の再定義と深い内面への探求がテーマとなり、「本当の自分とは何か」「何のためにこの人生を生きているのか」といった根本的な問いに自然と向き合う流れになります。このプロセスを恐れず、誠実に取り組むことができれば、逆行の終わりには、自分自身に対する理解と信頼が深まり、新たなビジョンと共に未来を切り拓く力が養われているでしょう。

こうした全体的な流れの中で、冥王星リターンは単なる崩壊のエネルギーではなく、再創造と高次の社会構築への促しともいえます。集合意識や宇宙の調和に根ざした占星術的な視点を持つ「アストラル・ハーモニー」派の占星術家たちは、「これは単なる終わりではなく、集合意識に基づく新しい社会の創造への招待」であると述べています。

アメリカの冥王星リターンは、単に一国の再編成にとどまらず、世界全体の構造転換の前触れとして広く注目されています。

その影響は国家の枠を超えて、私たち一人ひとりの人生観や価値観、さらには社会との関わり方にまで波及します。

とくにこの時期、多くの人が無力感や方向性の喪失を経験しやすくなるかもしれませんが、実はそれこそが新たな意識への扉が開かれるサインなのです。

冥王星のエネルギーは、表面的な安定や古い安全領域を揺さぶることで、私たちをより本質的な自己へと導こうとします。今という時代は、これまでの人生観を抜け出し、魂レベルでの覚醒と再構築に向かう大切な通過点なのです。

今こそ、古いパターンを手放し、自分自身の本質を取り戻すことで、

より調和的で創造的な未来を築くことが求められているのです。

エハン・デラヴィ【読むだけでゆるしがはじまるシリーズ】